EVが普及すると故障車だらけになる?
クーリエ・ジャポンから、「EVが普及すると故障車だらけになる」という記事が出ているが、根拠になるデータはあるのだろうか。記事で触れているのは、中国の話のようなので、中国にEV故障車の統計データがあるのかもしれないが、EV故障車の実数や故障率について、記事は一切触れていない。記事で紹介されているのは、中国におけるガソリン車とEVの修理工場数を比較したもの(
町工場で直せる故障はEVもエンジン車も同じ
エンジン車およびBEVの故障は次の4群に分けて考えると分かりやすい。第1群はエンジン車特有の故障で、「内燃機関そのもの」や「燃料ポンプの故障」および「制御コンピュータの異常によるミスファイヤ」や「ダイナモの故障」などがこれにあたる。現行のBEVは変速機のないものが殆どなので、「変速機の故障」もエンジン車特有の故障に加えてよいだろう。第2の群には、「ブレーキ系統」や「電気系統(電気配線系統)」、「サスペンション系統」の故障が分類され、エンジン車でもBEVでも遭遇しうるものとなるが、ブレーキ系統については、回生ブレーキを多用するEVでは故障は少ないと見込まれる。実際、EVの回生ブレーキに慣れると、油圧式ブレーキは殆ど使わなくなる。第3群が、「12Vバッテリー上がり」や「パンクなどのタイヤ関連」「車載カメラの故障」などの軽微とも言える故障で、EVでも起こるが、第2群と同様、旧来の自動車整備工場で対応可能だ。第4群の故障が、BEV特有の故障で、「走行用バッテリー」や「制御装置(EVコンピュータ)」や「駆動モータ」の故障が含まれる。これらは専門知識が必要な高圧回路やコンピュータ回路からなるため、既存の自動車修理工場での対応は難しいと思われる。
EV特有の故障はメーカー対応になる
BEVのような先端機器の修理対応がどうなっているかは、エアコンや給湯器や大型ストーブなどの故障について考えてみるとよく分かる。エアコンが故障した場合、近所の電気店で修理して直ると思っている人はいないだろう。同様に、高圧回路と爆発の危険もあるリチウムイオンバッテリーが絡むBEV特有の故障を町中の修理工場で取り扱えるとは考えにくい。鉄道会社の電車修理工場のような大規模な設備が必要で、町中の工場で対応できるBEV特有の故障は、コンピュータの交換までだろう。コンピュータの交換も、テスラの例だが、新車購入と同じくらいの費用がかかるようなので、個人でEV特有の故障を修理して再利用するという選択肢は考えにくい。つまり、
リーフの6年間
BEVである日産リーフに新車から6年乗って、遭遇したトラブルは、①12Vバッテリーの消耗による起動不良(バッテリ交換で解消)と ②アラウンドビューモニタ・リアカメラの不良(保証期間内で無償交換)および ③左後輪のパンクだった。BEVには補機バッテリーと呼ばれる12Vバッテリーが積まれており、これでEVシステムを起動する訳だが、乗る機会が少なかったり、寒冷地だったり、アクセサリーを使いすぎたりした場合にはこの消耗が早くなり、起動困難となることがある。テスラでは駐車中にも補器バッテリーへ適宜充電する仕組みがあるようだが、リーフでは走行モードでないと充電されない。3年目後半にEVシステムの無償アップデートがあり、補機バッテリーの持ちや電費が改善されたようなので、充電の仕組みが今も同じかどうかは定かではないが、12Vバッテリーの電圧監視
12Vバッテリー注意 : ある程度走行すると12.8Vまで下がる。
12Vバッテリー交換 : ある程度走行しても電圧が下がらない。