鈴木俊一知事の4期という長期政権の後、庶民の圧倒的支持を得て「青島幸男」都知事が誕生したが、鈴木都政16年でがっちり固まった官僚に牙を抜かれた青島は何の改革もできず、マスコミには無能と叩かれ、最後は「唯、へらへらと視察に出向く」だけとなった。青島最後の頃、勤務先にも視察に来たが、赤絨毯が敷き詰められたほめ殺しいっぱいの庁舎内で、ばつの悪そうな笑顔を振りまく彼の姿に哀れみさえ感じた。青島の次が「石原慎太郎」知事で、青島の失策を目のあたりにした石原は、官僚の反発を強心臓で押し切り、「子飼の強面の副知事(浜渦武生)」を任命して、強権的に主張を通した。ただ、この浜渦も、官僚の反撃(ベルトで殴ったというパワハラ、政敵に不利になる質問を民主党に依頼したなど…)で、2005年に百条委員会で追究され、慎太郎も切らざる得なくなった。それでも4期続いたのは、石原の人脈と強さ(強さについては浜渦が再評価されている)だろう。国政復帰のため、石原が引退、その政治信条を次ぐ都知事として「猪瀬直樹」が就任したが、1期目の途中に徳洲会からの裏金疑惑(政治献金を正しく記載していなかった)が発覚、「カバンの中身やその重さ」(~カバンの中に5,000万円が入っており、猪瀬が重そうに運んだ~)についての百条委員会が開催されて辞任した。後日、特捜部は公職選挙法違反の罪で猪瀬直樹を略式起訴した。続く、「舛添要一」都知事も、「公用車の私物化と自宅への政治資金投入(自宅を事務所にしていた)」を厳しく追及され、粘った挙句だったが、辞任となった。彼は政治資金として正しく届け出ていたため、「セコい政治家」と非難はされたが、訴追はされていない。彼は、今回の安部派事件についても、「政治資金を正しく届け出ていれば問題はなかった」と自らに照らし合わせて述べている。最後に「小池百合子」現都知事だが、「オリンピックと豊洲問題」で果敢に闘ったが、組織は崩せず、オリンピックは IOCの希望通りに開催され、豊洲移転については、当時の東京ガスと合意を交わした人物(責任者)さえ特定できずに幕引きとなった。
このように、鈴木俊一以降の都知事はすべて官僚の反撃に会っており、石原と小池を除き、完膚なきまで潰されている。たかが地方官僚といっても「マスとして動く」ので侮れるものではなく、今回の兵庫県の事件も、構図としては同じに見える。選挙で選ばれたということは大変重いことで、同じく選挙で選ばれた「議員」が告発するなら話は分かるが、行政機構の手足たる官僚がマスコミにリークするのでは違和感しか感じない。ましてや、局長級が「公益通報で告発」とは何だろう。権限的に近いものの争いなので、「権力闘争」だろう。これを認めると、気にいらない政治家を公益通報で官僚が追い出せることとなり、民主主義が根幹から揺るがされる。兵庫県知事に問題があるなら、「議員が不信任決議を成立させる(そして再選挙を実施する)」か、「有権者が知事をリコール」すべきだろう。昔から権力闘争はあったが、「怪文書」を「公益通報」とはいわなかった。時代は変わったね。