Y染色体を持つ「女性」も存在する
2024年8月1日(フランス時間)にパリ近郊で行われた「ボクシング女子66キロ級」の試合で、テストステロン高値を示すアルジェリアの女子選手と対戦したイタリアの女子選手が危険を感じて途中棄権したという報道があった。このアルジェリアの女子選手(イマネ・ヘリフ)の参加資格については、ひろゆきはじめ、何人かの識者がコメントを書き込んでいるが、残念ながら、それらは表面的で、誤りも多く、読んでも意味が分からないものとなっている。
一般に男女は染色体で分けられると思われているが、Y染色体を持つ「女性」も存在する。性の発達が先天的に非定型で、誕生時に女性と判断された場合には、戸籍上(日本でも)も女性となる。これらの女性には、卵巣や子宮はなく、腹腔内に精巣を持つことが多く、月経がないことで気付かれる。精巣が機能している場合にはテストステロン値が高くなり、今回のような問題が起こる。
DSD問題は「世界陸連」でも長く議論されてきた
スポーツ界ではこのような「女性」をどのように扱っているのか、少し検索してみた。
2)2019年:セメンヤらは、「スポーツ仲裁裁判所(CAS)」および その上級裁判所である「スイス連邦最高裁」に訴えた。2019年5月、スポーツ仲裁裁判所(CAS)で棄却、スイス連邦最高裁でも退けられた。(理由: 規定は差別的だが、公平性を守るため必要)
3)2021年:東京オリンピック 「女子種目に出られなかった2選手、別種目で快走 物議醸す新規定」- 世界陸連の規定(2018.4)では、テストステロン値の高い選手は女子400~1600mには出られなかった。このため、制限のない200mに出場、銀メダルと6位入賞を果たした。
4)2023年3月:世界陸連はDSD規則を、「全種目において、最低24か月間、テストステロン値を2.5nmol/L以下にすること」と変更した。
5)2023年4月:「【陸上】 女子200m五輪メダリストのムボマが競技復帰へ テストステロン値の基準をクリア」 (ムボマは経過措置で6か月間でクリア)
6)2023年7月:「欧州人権裁判所」がセメンヤの訴えを一部認める判決を下したが、世界陸連は『DSD規則を変更することはない』と声明、上訴を表明した。
「世界陸連」に関してはこのような経緯のあることが分かったが、ボクシング界やIOCにはきちんとした規定がないのか、問題が大きくなっているようだ。
このような事実があるにもかかわらず、Google Discover や スマートニュース といったニュースサイトでDSD問題が正しく伝えられていないのはなぜだろう? 記事の収集がプログラム任せで無責任?かつ、人間のチェックもなく、AI も導入されていない? — 情報は自分たちの得意とするネット上にあるだから、正しく紹介できて当然のように思うが、どうだろう。