スノーフレークマークとは何か(ドイツ冬タイヤ事情)

スノーフレークマークのないタイヤは冬用タイヤと認められない

NHK・BSのワールドニュースで「ドイツZDF」が、ドイツの冬用タイヤ規制が今冬(2024.10.1~)から変わると伝えていた。従来の、M⊞Sマークだけでは冬用タイヤとは認められず、「スノ―フレークマーク(3PMSF)」なしのタイヤでの<冬用タイヤ装着義務のある道路の走行>は罰金(60ユーロ)が課されると報道していた。ただし、ドイツでは2018年以降、M⊞Sタイヤには通常「スノ―フレークマーク」がついているようで、性能の低い古いタイヤへの規制のようだ。日本ではなじみの薄い「オールシーズンタイヤ」および「M⊞S」タイヤだが、ドイツでは、従来からオールシーズンタイヤであるM⊞Sタイヤも冬用タイヤとして認められていたようだ。今年10月から「スノ―フレークマーク」が必須となったということで、日本での現行の規制(次々項参照)と同じ扱いになった。欧米では、M⊞Sタイヤを冬期にも使うユーザーが多かったので、冬期性能が基準以下のM⊞Sタイヤを排除する目的のようだ。

スノータイヤ / ウィンタータイヤ [対]
オールシーズンタイヤ / M⊞S / 3PMSF

1980年代まで、日本の雪国では、スノータイヤとしてスパイクタイヤ(Studded tire)が使われていたが、1991年から1993年にかけてのスパイクタイヤ規制で使われなくなり、stud を打ち込まず、特殊なゴムとトレッドパターンで滑りにくくした「スタッドレスタイヤ(Studless)」がスノータイヤの主流となった。これに対し、欧米では、(一般にスノータイヤには分類されない)「オールシーズンタイヤの一種である M⊞S(マッド&スノー)」を冬期にも使うことが多かったようだ。M⊞Sタイヤという分類は単なるトレッドパターンの形状で、パフォーマンス性能を示すものではないが、これに「3ピークマウンテンスノーフレーク(3PMSF)」マークが付加されると、雪道でのトラクション指数が一定値を超えていることが証明される。(1999年、米国タイヤ製造業者協会[USTMA]&カナダゴム協会[RAC])

3PMSF(3ピークマウンテンスノーフレーク

スノーフレークマークのあるオールシーズンタイヤは、現行の「冬用タイヤ規制」(日本) に適合しているが、M⊞Sタイヤそのものが、真の意味でのスノータイヤではないため、豪雪地帯や凍結路面や圧雪路面では正式なスノータイヤである「スタッドレスタイヤ」を使うべきだろう。現に、極寒の北欧の一部では(M⊞Sタイヤはおろかスタッドレスタイヤでも対応が難しいため)いまだにスパイクタイヤが使われていると聞く。今回の報道では、日本で言うスノータイヤであるスタッドレスタイヤについて触れられおらず、雪国では、ほぼ全車がスノータイヤ(スタッドレスタイヤ)を装着する日本の現状からすると奇異に感じられる。M⊞Sマークに加え、「スノーフレークマーク」が付加されたからと言って、雪道に慣れないドライバーがスノータイヤのつもりで運転すると、スリップやスタックの原因となる。北米の高速道路で、冬期にスリップして道路脇に突っ込んでいる車をTV報道で見るのは、北米ではスタッドレスタイヤを装着した車が少なく、乾燥路を走っていたオールシーズンタイヤのままで積雪時の高速道路を走り続けるからだ。雪は少し降っただけでコントロールを失わせ大惨事となる。

オールシーズンタイヤの組織的キャンペーン(日本)

昨冬(2023年冬)から、日本でも急に「オールシーズンタイヤ」の記事が多くなった。一体何事か思っていたが、欧州での規制が見込まれたため、販売促進に入ったものと理解できる。規制をクリアして「スノーフレークマーク」を付けたM⊞Sタイヤの販売量を稼ぎ、コストカットを図るため、日本でもキャンペーンを始めたようだが、雪国で普通に使えるように紹介するのは間違いだ。東京都内など、ほとんど積雪のない都市部での急な積雪に対応するためと紹介すべきで、都内から豪雪地帯のスキー場を訪れる際には<本物の>スノータイヤ(スタッドレス)を履こうというキャンペーンを同時に実施すべきだと思う。村のGSでも聞いてみたが、全車スタッドレスでオールシーズンタイヤは見かけないとのことだった。雪国では、滑ると大事になるので、スタッドレスタイヤを履いていても、スピードは抑え、車間距離は充分空け(これが特に大切)、急ブレーキ急ハンドルを避けて走るが、このあたり、都会の人たちは分かっているかな。

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路面対応イメージ

路面状態3PMSF付
オールシーズンタイヤ
スタッドレスタイヤ
(スノータイヤ)
夏タイヤ
凍結路面✕ 絶対ダメ・滑る
圧雪路面✕ 絶対ダメ・滑る
シャーベット路面✕ ダメ・これでも滑る
高速道路冬用タイヤ規制 *1通行可通行可チェーン装着 ←危ない
全車両チェーン装着規制 *2チェーン装着チェーン装着チェーン装着 ←装着しても望み薄
ドライ路面
ウエット路面

(FALKENタイヤより、一部改変)