フランスで少年が殺人の実行役

闇バイトは世界のトレンドか

NHK・BSのワールドニュース(2024.10.7放送)で「フランス2」が、刑務所から携帯電話で指示された少年が関与した殺人事件がマルセイユで2件続けて起きたと報道していた。指示役に指図され、実行役の少年が標的に向かうという、劇画的犯行で実行役と標的とは互いに面識がないという点も日本の闇バイトとよく似ている。日本でも、強盗に入られ命を奪われた被害者がいたが、マルセイユでは無関係の配車サービス運転手が銃で殺害されたそうだ。被害者にとってとんでもない事件なのは当然だが、実行役にとっても、後の人生を考えると馬鹿げた、益にも何にもならない犯行で、なぜ、こんな事件が豊かだとされる国々で起きるのか、二世代前の管理人には理解できない。

フランスでは子供をリクルート 

報道されたマルセイユでの事件は2件で、1件目は指示役に指図された15歳の実行役が、指示された標的(犯罪組織の一員らしい)を暗殺に行って返り討ちに会い、刺されて焼き殺されたという事件だ。もう1件は、同じく子供である、14歳の実行役が、標的の殺害を指示され、標的居住地に配車サービスで向かったところ、運転手が異変を感じて指示に従わなかったため、激怒した実行役に銃で殺されたという事件だった。ともに、実行役は携帯電話での指示で動いており、報道では「麻薬のディーラーにSNSでリクルートされた」と言っていたので、テレグラムシグナルなどの秘匿性の高い通信アプリが使われたことは容易に想像できる。フランスでは刑務所への携帯電話の不法持ち込みが年間5万件を超えており、刑務所側でも妨害装置を設置したりと対策は講じているようだが、成果は上がっていない。

誰のための秘匿性アプリか

いわゆる闇バイトだけではなく、犯罪組織やテロリスト集団、それに戦争にまで、テレグラムシグナルが使われている。先日も、フランス政府がテレグラム創始者を拘束、情報公開を約束させたばかりだ。テレグラム創始者はロシア国籍を持つ2重国籍者だそうで、秘匿性を追求するインセンティブは理解できるが、民主国家での犯罪への加担はまずいだろう。リベラルを自称する一部マスコミは秘匿性=個人情報保護として高く持ち上げ、一般の国民にはほとんど必要のない秘匿機能を褒め称え、これを失うと直ちに強権国家に転落するかの如き報道をする。これは一種の報道強権主義だが、マイナンバーカードおよびその健康保険証機能について「個人情報が洩れる」と報道されると、多くの国民も納得してしまう。健康保険証の不正利用が年間600万件にのぼり、処理費用は1000億円を越え、善意の被保険者の支払う健康保険料や税金で補填されているという事実については報道しない姿勢だ。

犯罪組織には健康保険も年金積立てもない

闇バイトに話を戻すと、このような「セコい犯罪」が彼らの後の人生に取り返しのつかないダメージを与える。単に「犯罪者になる」「前科がつく」だけではないことは、犯罪組織が健康保険を掛けているか犯罪組織が年金を積み立てているかを考えてみるとよい。年金も健康保険も、雇用企業が1/2負担していることを犯罪者は知っているだろうか。かくして、無保険者や無年金者、低年金者が生まれるが、その負担は、正当に年金を掛けている現役世代および掛けてきた年金生活世代に及ぶ。さらに、社会不安を招かないよう、政府は「生活困窮者支援金」などを給付するが、これも血税から支払われるものなのだ。(註)病気やけがで働けず、意図ぜずして低年金者となった不幸な方々を非難する意図はありません。

年金破綻を主張する記事に騙されるな

定職に就き、継続的に働けば、健康保険は約束されるし、それなりの年金も積み立てられる。退職後の年金受取額は、一定の期間一定の収入があれば均等化するようデザインされていて、高所得者には不利となっている。また、「年金受取額の分布」として報道される低年金者の中には第3号被保険者が入っていることを忘れないでほしい。第3号被保険者はいわゆるサラリーマンの妻(扶養家族)で、昭和61年4月から国民年金に自動加入となった。第3号被保険者は低年金(月5万円程度)だが、通常、扶養家族となっているため、生活困窮者支援金は支給されない。つまり、行政も世帯主と一体として扱っている訳で、年金受取額分布で別扱いにするのは、低年金者が多いと主張するためとはいえ、正しくない。このあたり、よく知らない人も多いだろう。今後、第3号被保険者は減っていくだろうが、共働き世帯が増えるため、世帯年金は倍近くに増えるだろう。(参考)年金積立金管理運用独立行政法人 の運用中資産は、2024年度第1四半期末現在で、254兆7,027億円